医療コラム

マレーシアで増えるデング熱|症状・予防・受診の目安

16.04.2026

マレーシアで増加するデング熱とは

マレーシアでは年間を通して高温多湿の気候が続くため、蚊を媒介とする感染症が発生しやすい環境にあります。中でもデング熱は、特に雨季前後を中心に感染者が増加する代表的な疾患です。 デング熱は、ウイルスを持った蚊(主にネッタイシマカ)に刺されることで感染します。人から人へ直接感染することはありませんが、都市部でも感染リスクがある点が特徴です。 日本では比較的馴染みの薄い感染症のため、初期症状を見逃してしまうケースも少なくありません。

デング熱の主な症状

感染後、通常は4〜10日程度の潜伏期間を経て症状が現れます。

代表的な症状は以下の通りです:

  • 突然の高熱(38〜40℃)
  • 強い頭痛(特に目の奥の痛み)
  • 関節痛・筋肉痛(「骨が折れるような痛み」と表現されることもあります)
  • 発疹(解熱前後に出ることが多い)
  • 吐き気・嘔吐
  • 倦怠感
多くの場合は1週間程度で自然回復しますが、まれに**重症化(デング出血熱・デングショック症候群)**することがあります。

注意すべき危険なサイン

以下の症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診してください
  • 激しい腹痛
  • 持続する嘔吐
  • 出血傾向(歯ぐき・鼻血・皮下出血など)
  • 意識がぼんやりする、ぐったりしている
  • 呼吸が苦しい
特に、一度熱が下がった後に症状が悪化するケースは注意が必要です。このタイミングで重症化することがあります。

他の感染症との見分けは難しい

マレーシアでは、デング熱のほかにも以下のような感染症が存在します:
  • インフルエンザ
  • 新型コロナウイルス感染症
  • チクングニア熱
初期症状は非常に似ているため、自己判断での見極めは困難です。血液検査などによる診断が重要になります。

デング熱の治療について

デング熱に対する特効薬は現時点ではありません

治療は以下のような対症療法が中心となります:

  • 解熱剤(※一部使用を避けるべき薬あり)
  • 水分補給(脱水予防)
  • 安静
特に注意が必要なのは、市販の鎮痛薬の一部(NSAIDsなど)は出血リスクを高める可能性があるため、自己判断での使用は避けるべきという点です。

日常生活でできる予防対策

デング熱の最も重要な対策は「蚊に刺されないこと」です。

具体的には:
  • 虫除けスプレーの使用
  • 長袖・長ズボンの着用
  • 室内での蚊対策(電気式蚊取りなど)
  • 水たまりを作らない(蚊の発生源対策)
特に、日中に活動する蚊である点は、日本の感覚と異なるため注意が必要です。

どのタイミングで受診すべきか

以下のような場合は、早めの受診をおすすめします:
  • 高熱が続く(特に2〜3日以上)
  • マレーシア滞在中に発熱・関節痛がある
  • 食事や水分が十分に取れない
  • 少しでも「いつもと違う」と感じる症状がある
デング熱は早期診断と経過観察が重要です。軽症に見えても、適切なタイミングでの医療介入が重症化予防につながります

最後に

マレーシアで生活する上で、デング熱は決して珍しい病気ではありません。しかし、正しい知識と予防意識を持つことで、リスクを大きく下げることができます。 発熱や体調不良がある場合には、「ただの風邪」と自己判断せず、早めに医療機関へご相談ください。

著者紹介

ビビアン医師/Dr. Vivien

ビビアン医師/Dr. Vivien

Hibari Clinic Malaysia Medical Director

モスクワにて医学部を修了後、マレーシア・ペナンの総合病院で臨床経験を積む。その後、ペラ州バトゥ・カジャ病院やセランゴール州のクリニックにて常勤医師として勤務。2018年よりひばりクリニックに勤務し、現在はメディカルダイレクターとして地域医療に従事している。小児科および心療内科に関心が高く、患者さま一人ひとりに寄り添った診療を大切にしている。